マルトラーナ教会 Chiesa della Martorana 1
(海軍提督の聖母マリア教会)


パレルモの旧市街の中心地、ヴィットリオ・エマヌエーレ大通りとマクエダ通りの交差点はクァットロ・カンティと言われていますが、この付近からノルマン王宮にかけては、古代フェニキア人やローマ人が城壁をめぐらせていたパレルモの最も古い地区です。

そこからほど近いプレトリア広場の南の小さなベッリーニ広場に面して、ノルマン時代の2つの教会があります。広場よりも一段高いところにあるのは、ローマ時代の城壁の上に建っているからです。

   

左側がマルトラーナ教会、別名海軍提督の聖母マリア教会(Chiesa di S.Maria dell'Ammiraglio)です。
1143年にルッジェーロ2世の宰相だったアンティオキアの海軍提督ジョルジョによって建てられましたが、後に隣接するベネディクト派の修道院に接収されたため、マルトラーナ教会と呼ばれるようになりました。
もともとはノルマン様式の教会でしたが、18世紀に大々的に改装されて教会の側面にバロック風のファサードが増築されました。現在はこのファサードは使われておらず、創建当時から残っている鐘楼の下の扉から出入りします。

右側のアラブ風の3つの赤い丸屋根が印象的な小さなサン・カタルド教会は、ルッジェーロ1世の宰相だったバーリの海軍提督マイオーネにより1154年ごろに建てられました。
18世紀には郵便局としても使われたという教会内部はがらんとしています。創建当時から残っているのは、はめ木細工の床と、十字架と福音書記者のシンボルが彫られた祭壇だけです。(右写真提供・稲穂さん)

 

後の改修工事で造られた後陣の主祭壇。

1533年のダ・パヴィアの「聖母被昇天」などの宗教画や大理石で美々しく装飾されていますが、これらのバロック風の「新しい」美術作品よりもほかに見るべきものがたくさんあります。
(写真提供・稲穂さん)
 

 

 

ひとたび目を天井に向けるとこの通り。ノルマン王宮のパラティーナ礼拝堂よりも古い12世紀半ばのモザイクがびっしりです。

キリスト伝、マリア伝、多くの預言者たちや聖人たちなどを描いたものです。

 

 

これは「受胎告知」のエピソードの大天使ガブリエル。聖母マリアのもとへ神の子を宿すことを告げに来たところです。
   

同じアーチ部分の右側には、大天使ガブリエルのお告げを受けてハッとしている聖母マリアが描かれています。写真左端の光の中から出ているのは「神の手」で、そこから聖霊のシンボルである鳩がマリアのもとへと向かって飛んでおり、今まさにお告げ通りにマリアが神の子を身ごもる劇的なシーンです。
   

「マルトラーナ教会・2」